楽園王2022年第1弾！－M/Mフェスティバル－参加公演

『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』より

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ごあいさつ。

お疲れ様です。楽園王の長堀です。こんばんわ。よい夜ですね。見上げれば星空。月が隠れて闇が深く星がすごい。こんな夜には星祭りを思い出しませんか？　同郷だといろいろ思い出も重なったりして。ええ、ほんと、お久しぶりです。お元気でしたか？ そう。ずいぶん寒くなりましたよね。首にストールでも巻いて家出ればよかったかな。ね、ははは、はい、お互いに風邪には気をつけましょう。ではまた、はい、また、必ず。必ず。

と、言うわけで、楽園王の次回公演が急に決まりました。急になんです。作品は、銀河鉄道の夜、というお話で、ご存知の方も多いでしょうが宮沢賢治さんの書いた童話が原作になっています。かつて岩手に実際に存在した、岩手軽便鉄道に思いを馳せながら、今生きる私達の眼差しと共に、二人の少年の銀河の旅路を描きます。猫は出てきません。アニメではなく、実際に起こった出来事だから。実はこの作品、何年か前にも上演をしていて、もうその時にはすぐに再演をしたいと思っていたのですが、そういう思いは実現しないというのがどんな劇団でも通例ですして、時間が経ちました。

それが今、急に銀河鉄道の再演が決まったのは、演劇祭に呼んでいただき、その演劇祭では宮沢賢治さんの作品をやるのが良い、という緩やかなコンセプトが見えたから。満を持して頑張ります。
もしよかったら、そのことも記憶にとどめておいて下さい。そうしてくれたら大変に嬉しい。そして、この機会に会うことが出来たなら、かなり素敵なのではないかと思っています。
あらためまして、どうぞよろしくお願いいたします。
2022年は何か新しいことが出来たらいいですね。新しい世界で。楽園王は31年目に入りました。

長堀博士、記。

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解説

楽園王公演にて、長堀博士が演劇作品として描く「銀河鉄道の夜」は、銀河鉄道が実在したのでは？という大胆な想像から話が進んでいく。宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」を書く切っ掛けとなったのは、若くして亡くなった最愛の妹・トシの影響が大きいだろう。賢治は、トシが亡くなった後、実際に鉄道の旅に出ている。そこで、この旅の先で、妹と会うことがあるのではないか？そんな思いを抱き、そのことが「銀河鉄道の夜」や詩集「春と修羅」に結実しているのは有名な話だ。また、私たちが勘違いしがちなこととして、銀河鉄道というものが、銀河をまるで宇宙船のように飛んでいる、という思い込みがあると考えた。漫画やアニメの影響は（そちらも名作であるので）大きい。だが、賢治が実際に書いた文章を読めば分かるが、作中に出てくる銀河鉄道とは地面の線路を走り、空を飛んでいるわけでは決してない。アメリカなど遠くまで行くものの、つまりは、地続きの話であるのだ。それらのことを総合すると、賢治が妹が亡くなった後に旅をした「岩手軽便鉄道」の旅こそが、「銀河鉄道の夜」の旅そのものであったのではないか？　そのような思いを得て、楽園王の銀河の旅が始まって行く。空を飛んでしまわない、地続きの、私たち自身の物語としての「銀河鉄道の夜」。